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機能創成セミナー Seminar on Mechanical Science and Bioengineering

第170回
2021年4月20日
17:20-18:20
オンライン開催
血球バイオメカニクスによる細胞~臓器スケール循環の理解
生体組織の維持に必要な循環(血液や体液の流れ)は,各種の力学原理に応じた ものと考えられる.この循環を理解するためには,血液に含まれる血球の力学特 性,血管の幾何学的形状,力学的境界条件などが,どのように流れに影響を与え るのかを知る必要がある.本セミナーでは,一例として,微小血管網内の血流挙 動,およびせん断流中の赤血球の変形運動挙動,の2つを挙げて,それぞれの挙 動の仕組みについて,材料および流体を含む連続体の力学システムの観点から, 説明を試みる.循環挙動に応じた組織や臓器の生理的および病的な振る舞いの仕 組みについても考察する.
坪田健一 教授
千葉大学人工システム科学専攻機械系コース
世話人:出口真次
第169回
2021年4月23日
15:10-
オンライン開催
回転円筒容器内の分離現象における粒子サイズと密度比の依存性について
粉粒体とは、熱ゆらぎの影響を受けない程度に十分大きな粒子の集合である。そのため外部から力学的駆動を受けた際、拡散による混合よりも、同じ粒子同士が集まって分離しやすい傾向があることが知られている。サイズ分離現象のひとつとして、大きさや比重の異なる2種類の粒子を円筒容器に入れ、容器を水平に置いた状態で回転させると粒子が分離し、軸に並行な方向に縞模様(バンド)が形成されることが知られている。これまでの先行研究で、粒子の比重が等しい場合に、軸方向の分離が起こる条件は調べられてきているが、比重比が1でない場合にはどういう条件でバンドが形成されるかは明らかになっていない。より一般的に、いかなる比重・サイズの組み合わせでバンドが形成されるのかを明らかにするために、今回我々はサイズや比重、円筒容器の内径を系統的に変えて実験を行った。従来、大きい粒子の動的安息角(容器が回転している時に粒子が形成する斜面の角度)が小さい粒子のそれより小さい時に軸方向の分離が起こると言われていたが[4]、実際にはこの条件がほとんど成り立っていないことが分かった。また、回転速度を固定したときに、バンドが形成される条件は、粒子サイズ、比重、円筒容器の内径、という3つのパラメータで決まることが分かった。最初に現れるバンドの本数も、この3つのパラメータの組み合わせからなる物理量と線形の関係にあることが実験的にわかった。縞模様の形成は、比重とサイズ、円筒容器の内径が重要な役割を果たすと考えられるが、そのメカニズムについて今後考えていきたい。
稲垣紫緒 准教授
九州大学
世話人:大槻道夫
第168回
2021年4月14日
16:50-
オンライン開催
やわらかい弾性体を用いた超音速すべり摩擦実験と解析解の導出
すべり摩擦は,2つの固体を接触させ,互いにすべらせることにより起こる現象です.これまで,すべり速度と摩擦挙動との関係は数多く議論されてきましたが,我々が知る限り,すべり速度が物体の弾性波速度を超える”超音速”条件に着目した実験研究は報告されていませんでした.また,弾性論を用いた解析解や数値シミュレーションも乏しく,摩擦挙動は未解明でした.そこで本研究では,まず,超音速条件を実現する実験系の構築を行い,それを用いた摩擦実験に取り組みました.ここでは,通常の摩擦実験に用いられる金属(弾性波速度のひとつであるS波速度が10㎞/s程度)に比べてかなりやわらかく,かつ高速で動かしても壊れにくい丈夫なシリコーンゲル(S波速度~10m/s)を用いることによって,1を超えるマッハ数を容易に実現することができました.次に,この系を用いてすべり摩擦実験を行ったところ,すべり速度が弾性波速度を上回るところで摩擦係数が急上昇するとともに,接触状態に大きな変化が現れました.さらに,この転移的挙動の説明するため,動的接触問題を拡張した解析解の導出にも取り組み,実験結果との良好な一致を得ることに成功しました.この結果は,ありふれたソフトマター固体であるゲルが,新奇の物理現象を観察することに活用できるという,興味深い事実を示しています.
山口哲生 准教授
東京大学大学院農学生命科学研究科
世話人:大槻道夫
第167回
2021年1月27日
17:30-18:30
オンライン開催
心臓血管系の臨床問題に対する数値解析の適用事例と今後の課題
数値解析、特に血流の数値流体解析の臨床問題への応用は長年取り組まれており、近年のCT画像と数値流体解析を用いたバーチャルFFRの成功により、医学界でも数値解析への期待が大いに高まっている.講演者のグループでは臨床チームとの緊密な連携のもと、数値解析的アプローチを用いて心臓血管系、特に冠動脈疾患(動脈硬化症)に関連する問題に取り組んで来た.本講演ではそのなかから特に以下のトピックについて紹介することにより、同様のアプローチの利点、可能性と今後の課題について議論する.

−臨床データ解析に向けた数値流体解析プロセスの最適化
−数値解析を用いた冠動脈ステントの特性評価
−予測医療に向けた補助人工心臓の術後パフォーマンス予測
−4次元MRI画像を利用したデータ駆動型流体解析手法の開発と検証
鳥井亮 Associate Professor
University College London
世話人:出口真次
第166回
2020年12月8日
10:00-10:30
オンライン開催
Molecular and biophysical bases for modulation of the focal adhesion-actin cytoskeleton system in response to extracellular substrate rigidity
Rigidity of the extracellular substrate largely influences cell adhesion and morphogenesis. On soft substrates, cells cannot stabilize cell-substrate adhesion, resulting in a failure of cell spreading on the substrates. While cell-substrate adhesion is primarily mediated by focal adhesions, their stabilization depends on formation of the stable linkage of the actin cytoskeleton with the focal adhesions. Here, we propose a potential mechanism for rigidity-dependent regulation of the actin cytoskeleton-focal adhesion linkage. Talin molecules linking between the retrograding actin cytoskeleton and the adhesion receptor integrin at focal adhesions are mechanically extended in a manner dependent on the extracellular substrate rigidity. Even though the talin-actin bond is short-lived, extension of talin exposes cryptic binding sites for the actin-binding protein vinculin, causing reinforcement of the talin-actin bond by vinculin. Once cell adhesion is stabilized, phosphorylation of another actin-binding protein calponin 3 regulates contractile force generation by actomyosin in response to rigidity of the extracellular substrate. Rigid substrates promote calponin 3 phosphorylation by MEKK1, which increases actomyosin-based generation of contractile force. Thus, modulation at multiple layers of the focal adhesion-actin cytoskeleton system would underlie proper responses of cell adhesion and morphology against rigidity of the extracellular substrate.
Hiroaki Hirata (平田 宏聡)
Graduate School of Medicine, Nagoya University; 名古屋大学大学院医学系研究科
世話人:出口真次
第165回
2020年12月8日
9:30-10:00
オンライン開催
Mechano-molecular mechanisms regulating cell adhesion nanomachines
Cells sense their physical surroundings through molecular nanomachines regulating force transduction and mechanosensing. One of such complexes is the Adherens Junction (AJ), an adhesion complex mediating cell-cell interaction. Within AJ, the protein a-catenin, has been suggested as a force-transducing element. However, it is unlikely that a single dominant tether could bear the load of and regulate such sophisticated and precise system to provide the high morphological plasticity observed in epithelial tissues. Indeed, we have previously unveiled a mechanism by which conformational switch of vinculin (a partner protein of a-catenin) could selectively engage the actin cytoskeleton in response to regulatory mechanochemical signals, effectively functioning as a molecular clutch, to mediate intercellular interactions. This finding implies that the force transduction and regulation at AJ may be more complex than a single tether functioning through a simple on-off model. Using a super-resolution microscopy approach, we report that vinculin, once activated, could form a direct structural connection with b-catenin, which can bypass a-catenin. Direct vinculin/b-catenin interaction can support mechanical tension and contributes to the stabilization of the cadherin-catenin complexes. We thus propose a multi-step mechanochemical process to mediate mechanical connection and the force-dependent molecular mechanics modulating AJ reinforcement in complex biological functions.
Cristina Bertocchi
Department of Physiology, Pontificia Universidad Católica de Chile
世話人:出口真次
第164回
2020年01月21日
15:00-16:00
基礎工学棟D棟3階A328
ナノスケールでの応力場:第一原理原子応力計算の開発とその応用例
応力は材料力学・連続体力学の枠組みの中で確立された物理量であるが,原子が構成する離散系であってもその重要性は変わらない.材料中の力学的不均一を可視化できるナノスケール応力場は,材料組織の不均一性とそれが発現する機械的特性の関係を解明する上で有用な知見となる.講演者らは電子構造に基づき応力場を評価できる原子応力計算法を開発し,表面,粒界等の格子欠陥系に適用してきた.本セミナーでは手法の詳細を解説するとともに,幾つかの応用例について紹介する.
椎原良典 准教授
豊田工業大学
世話人:垂水竜一
第163回
2020年01月07日
15:20-
基礎工学国際棟セミナー室
ジャミング転移点近傍の非局所的レオロジー
非熱的なソフト粒子系(コロイド、エマルジョン、泡、粉体など)のレオロジーは、ジャミング転移点近傍で強い空間相関による非局所性を伴うと予想される。非局所的な構成則では、応力は空間内のいかなる点の変形に対しても応答するよう再定義され、粘性率は異なる点を繋ぐ伝搬関数(グリーン関数)の役割を果たす。伝搬関数のモデリングは難題なので、我々はこれを分子動力学法で直接計算した。サスペンションなど、溶媒から抵抗を受けるソフト粒子のモデルを使い、コルモゴロフ流によって局所的なせん断率と応力を発生させ、伝搬関数としての粘性率を測定する。伝搬関数のフーリエ変換が波数の線形項を含むという新しい発見に加え、これを考慮したグリーン関数から非局所性の範囲を定量化したことに意義がある。
齊藤国靖 准教授
東北大学
世話人:大槻道夫
第162回
2019年12月16日
11:00-11:40
基礎工学棟D棟4階D404(共用セミナー室)
多細胞組織におけるメカノケミカルフィードバックシステム〜パターン形成、集団運動、形態形成〜
細胞は、受容した力を生化学反応に変換し、力生成で応答する生き物らしい性質をもっています。このメカノケミカルフィードバックを有する細胞が集団で発揮するダイナミクスは、さまざまな生命機能の根幹をなします。本セミナーでは、MAPキナーゼERKシグナルに着目し、培養細胞における細胞集団移動とマウスの肺における分岐形態形成に関する多細胞のメカノケミカルフィードバックシステムについて紹介します。メカノバイオロジー、細胞生物、発生生物、生物物理、イメージング、数理モデルなどがキーワードですが、美しい動画がたくさんあるので、これらの分野に馴染みのない方でも楽しめると思います。
平島剛志 講師
京都大学大学院 医学研究科病態生物医学
世話人:出口真次
第161回
2019年12月03日
13:00-
大阪大学会館セミナー室1
やわらかい粘弾性体の粘着・剥離・摩擦
粘着剤,ゴム,ゲルなどの材料は,高分子がゆるく架橋してできた,やわらかい粘弾性体である.やわらかい粘弾性体は,大きな粘性や数100%を超える巨大変形などの際立ったバルク力学特性を示すだけでなく,基板と粘着・剥離を起こす際にも特異な界面力学挙動を生じる.本講演では,まず,粘着剤の粘着・剥離動力学に関する実験・理論・数値計算の現状をご紹介する.メソスケールで現れる複雑な変形機構の解明を通した,分子構造からマクロ力学特性へ繋ぐ際の困難を乗り越えるための戦略について議論する.また,後半では,粘着性をもつゲルの摩擦挙動について議論する.新たに見つかった,間欠的・カオス的なスティックスリップモードに関する実験・理論・数値計算の結果を中心に,やわらかい粘弾性体と基板との界面が生み出す多彩な動力学現象の一端をご紹介する.
山口哲生 准教授
九州大学
ソフトマターの破壊:柔らかさが応力集中を低減する2つの事例
ガラスなど脆性物質の耐荷重は,鋭い傷やマイクロクラックの存在によって驚くほど低下する.それらの先端には著しい応力集中が生じるからである.強靭化とは,線形弾性からき裂伸展の間に,何らかの形で応力集中を低減させる機構を入れ込むことに他ならない.ゲル状およびフィルム状物質という柔らかさ-各々,違った意味での柔らかさである―を持った系における応力集中の低減機構について, 講演者がこれまで行ってきた研究を事例として考察したい
田中良巳 准教授
横浜国立大学
き裂進展数理モデルと粘弾性体への拡張
材料組成の変化を秩序変数で表すフェーズフィールド法は、自由境界を持つ多くの分野へ応用され、き裂の有無をフェーズフィールドで表現したき裂進展モデルについても近年盛んに研究されている。講演者と木村は、Bourdin-Francfort-Marigo の近似エネルギーの勾配流方程式を導出することで、フェーズフィールドと板の変位について、数値シミュレーションに適した時間発展方程式が導出できることを示した。さらに、田中のアイデアにより Maxwell 型粘弾性を持つモデルに拡張され、数値シミュレーションから境界変位速度と粘弾性係数の関係によりき裂の進展が切り替わることが確認された。このモデルは、Zener 型や一般化 Maxwell 型へも拡張できることもわかっており、より現実の材料に近い特性を再現し、新しい材料の設計に活用することが期待されている。
高石武史 教授
武蔵野大学
世話人:垂水竜一

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