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機能創成セミナー Seminar on Mechanical Science and Bioengineering
第209回
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2025年3月28日(金) 13:30-14:30 [March 28th 2025 (Fri) 13:30-14:30] C棟セミナー室 |
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壁乱流の壁面圧力変動と乱流構造の関係 | |
壁乱流の壁面圧力変動は、壁上方の乱流構造と密接に関連している。風洞試験の結果から、乱流境界層における速度場と壁面圧力変動について、正の壁面圧力変動は上流側のスウィープ運動と相関があり、負の壁面圧力変動は下流側のスウィープ運動との相関がみられた。壁面圧力変動に関連する速度場構造のサイズは、流れ方向には境界層厚さの数倍程度、壁垂直方向には境界層厚さの半分程度であるような比較的大規模な構造であることが示された。 一方で、チャネル乱流のDNSデータを用いた、強い壁面圧力変動ピークに対応する乱流構造の解析では、壁面圧力変動はバッファ層に存在する渦構造からの寄与が主であることを示した。正の圧力変動ピークは複数の渦構造が関与して生ずるせん断層に関連し、負の圧力変動ピークは単一の渦の直下に生ずる傾向にあることを明らかにした。また圧力ピークの数密度は大規模な高速領域において、より高い傾向にあることが示された。 これらの結果を総合すると、大規模な高速・低速構造が壁面近傍の渦構造に影響を与え、間接的に壁面圧力変動に寄与していると考えられる。このことについてDNSと実験データの解析結果を示して議論する。 | |
中 吉嗣 准教授 (明治大学 理工学部) | |
世話人:本告遊太郎 | |
第208回
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2025年3月11日(火) 11:00-12:00 [March 11th 2025 (Tue) 11:00-12:00] D棟4階共用セミナー室(J404) |
An Expedition in Potential Energy Landscape to Decipher Disordered Solids | |
Glasses, as a disordered and non-equilibrium metastable material system, do not have well-defined topological defects such as dislocations and grain boundaries. For this reason glasses exhibit many promising physical and mechanical performance and endow the system with wide-range and continuous tunability, as opposed to their crystalline counterparts. However, also due to the lack of order and disappearance of lattice periodicity, building a valid structures-properties relationship in glasses has been a longstanding challenge. In this talk I will show that there exists a hidden order in disordered glassy materials, and such order can be revealed from the potential energy landscape (PEL) of the system. It is demonstrated that macroscopic deformation mechanisms (localized vs cascade) depend on the density of local minima of the materials underlying PEL: higher density would enable more efficient energy dissipation and yield better ductility. I will also show that the competitions between the elementary activations and relaxations on PEL determine many critical phenomena in disordered materials, such as aging/rejuvenating crossover, thermo-mechanical hysteresis, etc. The PEL perspective allows us to develop a self-consistent equation to describe the time evolution of the disorder materials under complex surrounding environments. The implications of these examples, as well as the broad impacts on other important problems such as metastable grain boundaries under extreme processing, will also be discussed. | |
Yue Fan (University of Michigan) | |
世話人:尾方成信 | |
第207回
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2025年1月16日(木) 15:30-16:30 [January 16th 2024 (Thu) 15:30-16:30] 基礎工棟B102教室 |
トンボの翅の凹凸構造が生み出す渦運動と非定常揚力増大機構 | |
トンボの翅はコルゲート型と呼ばれる凸凹した断面形状を持ち、翼性能を向上させる可能性が報告されているが、詳細な研究は不足している。特に、非定常な流れの詳細に焦点を当てた研究例は少ない。静止状態から急出発する翼運動では、平板翼上で前縁渦と逆符号を持つ2次渦(ラムダ渦)が形成される。これに対し、我々はコルゲート翼において同様の解析を行い、凹凸構造がラムダ渦を崩壊させ、凹部に閉じ込める現象を観察した。この結果、コルゲート翼は平板翼と比較して高い揚力を示すことが確認された。 | |
藤田雄介 特任助教(広島大学大学院統合生命科学研究科) | |
世話人:本告 遊太郎 | |
第206回
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2024年12月23日(月) 16:50-17:50 [December 23rd 2024 (Mon) 16:50-17:50] 基礎工学研究科 G棟 G508室 |
外乱適応時にはたらく脚間協調の理解に向けて -Split-belt treadmillを用いた歩行実験- | |
動物は高い適応能力を有する.ヒトや4足動物のロコモーションに焦点をあてると,例えば歩行中に外乱が加わっても,巧みに脚を動かすことでその外乱に適応できる.この適応において,どのような機序に従い脚を動かしているのかよく分からない部分も多く,これまでに様々な歩行実験が行われてきた.なかでも,脚間協調を明らかにするため左右ベルト速度が異なる「split-belt treadmill」を用いた歩容適応実験が注目されている.本発表では,これまでに行われてきた動物およびロボットによるsplit-belt適応実験ならびに,それぞれの実験より得られた知見等について,発表者の研究内容も含め紹介する.また,split-beltに期待される展望についても述べる. | |
古殿幸大 助教(舞鶴工業高等専門学校 電子制御工学科) | |
世話人:青井伸也 | |
第205回
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2024年11月12日(火) 13:30-14:30 [November 12th 2024 (Tue) 13:30-14:30] 基礎工学研究科 C棟共用セミナー室(C419) |
細胞配向のトポロジーを予測・制御するための数理基盤 | |
上皮細胞,線維芽細胞,筋細胞などの紡錘形状をもつ細胞は,細胞密度が高くなると同じ方向へ配向する配向秩序性を示し,細胞の生化学的な機能に影響を与える.特に,細胞の配向角度が定義できない特異点であるトポロジカル欠陥は,アポトーシスなどと関連することが明らかになっており,欠陥の振る舞いに注目した研究が発展している.したがって,トポロジカル欠陥が細胞集団のどこで生成されるかを予測・制御することは,実験の再現性の向上や細胞組織の設計において重要である.そこで講演者は,微細構造を利用して細胞集団の配向構造を制御する理論を考案し,その実験検証を行ってきた.本講演では,講演者らのグループによって近年確立している複素解析に基づく細胞配向のトポロジーの予測理論について紹介する.また,確率モデルを導入することにより,細胞培養実験における配向構造のゆらぎを定量化する方法と実験結果について紹介する. | |
宮廻 裕樹 講師 (東京大学大学院情報理工学部系研究科) | |
世話人:松永大樹 | |
第204回
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2024年11月1日(金) 10:30-11:30 [November 1st 2024 (Fri) 10:30-11:30] 基礎工学研究科 A442室 |
腱細胞生理学的機能と力学負荷の関係 | |
腱は力学負荷の増減に対して構造と機能(強度や弾生率などの力学特性)を変化させることはよく知られている.その適応現象は主として腱の内部に存在する腱細胞が担っており,腱細胞の力学刺激応答の機序,およびその応答パターンは長年研究者の興味を集めてきた.腱はコラーゲン線維が束となった構造をもち,腱細胞はその線維間に存在する.腱には主として引張負荷が作用するため,腱細胞も主として引張刺激に応答していると考えられている.しかし,その応答メカニズムはそれほど単純ではないことが近年の研究で明らかになってきた.本セミナーでは腱組織のバイオメカニクス,メカノバイオロジーを統合的に解説し,腱組織・腱細胞の生理学的機能と力学負荷との関係について議論したい. | |
前田英次郎 准教授 (名古屋大学大学院工学研究科機械システム工学専攻) | |
世話人:出口真次 | |
第203回
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2024年12月3日(火) 11:00-12:00 [December 3rd 2024 (Fri) 11:00-12:00] 基礎工学研究科 C棟セミナー室 |
粘弾性流体の高Reynolds数Taylor-Couette乱流における抵抗変調と流れ構造 | |
高いReynolds数の乱流は活発な運動量交換による大きな壁面摩擦抵抗をもたらすため、摩擦抵抗の低減が望まれる。簡便な手法として、液体乱流への高分子や界面活性剤の添加が知られ、微量の添加であっても顕著な乱流抑制や抵抗低減が実現できる。しかしながら、高分子や界面活性剤の水溶液は粘弾性を示す非Newton流体であり、その粘弾性が乱流におよぼす影響を理解するために基礎的な研究も不可欠である。そのために利用される単純な流れ場として、回転円筒間流れ(Taylor-Couette流)が知られる。興味深いことに、先行研究では、流体の粘弾性はむしろ摩擦抵抗を増大させ、抵抗低減は数例しか報告されていない。はたして、粘弾性流体のTaylor-Couette乱流における摩擦抵抗の増大(あるいは低減)はどのように理解すべきか。本研究では、この問題に答えるために、粘弾性流体として希薄な界面活性剤水溶液を用いたTaylor-Couette乱流の実験を行った。大型の装置を用いた非常に高いReynolds数の乱流を維持し、内外円筒の回転も制御した広範なパラメタ域での実験の結果、抵抗低減効果が現れるには十分に高いReynolds数が必要であること、低いReynolds数域では逆に非常に大きな抵抗増大が生じることがわかった。また、乱流速度場の計測により、大きな抵抗増大が生じる場合には、円筒間には平均流の構造として剛体的に回転する流れが存在することが明らかになった。講演では、この剛体回転流れと抵抗増大の関係、およびそのパラメタ依存性についても議論する。 | |
堀本康文 助教 (北海道大学工学部) | |
世話人:後藤晋 | |
第202回
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2024年10月25日(金) 14:00-15:00 [October 25th 2024 (Fri) 14:00-15:00] 基礎工学研究科 J棟共用セミナー室(J114) |
Electron-Beam Induced Athermal Deformation: A Novel Understanding for Viscoplastic Deformation and Mechanical Amorphization of Amorphous and Crystalline Silica | |
Amorphous silica, typically brittle, can undergo viscoplastic deformation at elevated temperatures. In this study, we highlight the possibility of achieving precise nanoscale mechanical shaping of amorphous silica through electron-matter interactions, without the need for heating. We found that ductile plastic deformation and densification can be induced athermally by focused scanning electron beams at low acceleration voltages. Our simulations indicate that the extent of deformation is governed by the interaction volume, where inelastic scattering occurs. Moreover, we demonstrated that electron beam irradiation can dramatically facilitate solid-state mechanical amorphization of crystalline α-quartz at room temperature, a process that usually demands high pressure. Microstructural examinations and atomic-scale simulations suggest that this is attributed to the uniformly distributed delocalized electrons, introduced by the electron beam excitation, collectively moving like anions situated between the positively charged silicon ions, effectively mitigating the repulsive forces within the distorted atomic structures. This research not only deepens our comprehension of electron-matter interactions but also unveils a new pathway for mechanical forming and processing of glass and ceramic materials. | |
Dr. In-Suk Choi (Department of Materials Science and Engineering, Seoul National University) | |
世話人:尾方 成信 | |
第201回
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2024年10月11日(金) 13:30-14:30 [October 11th 2024 (Fri) 13:30-14:30] 基礎工学研究科 B棟401教室 |
変形粒子系のガラス転移:硬さとフラジリティの関係 | |
ガラス転移点近傍では,分子がランダムな配置のまま運動が凍結され,粘性率や緩和時間などが急激に増加する.特に温度・充填率の変化に対する動力学の敏感性(フラジリティ)は,粒子の硬さによって大きく分けて二つに分類される.柔らかい粒子では,緩和の活性化過程が温度や充填率に依存しないアレニウス的な振る舞う一方,硬い粒子の場合は,温度や充填率に強く依存する超アレニウス的な振る舞いを示すことが実験で報告されている. 本研究では,フーリエ級数により表現される変形可能な粒子モデルを採用し,フラジリティと粒子の硬さの関係を数値計算で検証した.その結果,変形が容易な柔らかい粒子ほど,転移点が高くなる.またフラジリティに関しても,柔らかい粒子ほどアレニウス的に振る舞うことを確認した.またセミナーでは発展的な話題についても紹介する予定である. | |
吉井究 博士 (名古屋大学大学院理学研究科) | |
世話人:後藤晋 |