研究室一覧

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非線形力学領域 Division of Nonlinear Mechanics

非線形力学領域は、機械などの人工物や自然界で生じる様々な力学的な問題や現象から、従来の「線形力学」の枠組みを越えた新しい「非線形力学」を構築するとともに、得られた知見をもとにこれまで存在しない機械や機能を生み出すことを研究・教育の理念に掲げています。非線形力学は線形力学の枠組みを越えて現実をより忠実に捉えようとするものに他なりません。研究の具体例としては、非線形性の増大に伴う流れの遷移現象、乱流などに代表される強非線形現象、マクロとミクロを結び付けるマルチスケール力学、固体変形の局在化、き裂、破断などの現実に直結した問題が挙げられます。領域は熱流体力学講座と材料構造工学講座からなり、基礎から応用にわたる広範な研究課題に取り組んでいます。

熱流体力学講座 Mechanics of Fluids and Thermo-fluids
熱工学グループ(教授:河原 源太、講師:本木 慎吾、助教:清水 雅樹)

熱および流体に関連する諸現象の解明とその応用に関する基礎研究を行っています。主な研究テーマは、十分発達した乱流の構造、動力学、統計性質の解明と制御、亜臨界乱流遷移現象の予測と制御、乱流における熱・運動量輸送の機構解明と伝熱促進・流動抵抗低減への応用、力学系理論に基づく発達した乱流や乱流遷移現象の解析と制御等です。

流体力学グループ(教授:後藤 晋、准教授:大槻 道夫、助教:本告 遊太郎)

流体力学に現れる種々の非線形現象を、(伝統的な演繹的手法に加えてデータ科学による帰納的手法も取り入れた)理論解析、大規模数値シミュレーション、および、室内実験を駆使して解明しています。具体的には、流れによる物質の輸送および混合現象、粉体や複雑流体などの流動現象、異なる流体どうしの界面を伴う流れの現象などを研究しています。これらの研究を通じて、強い非線形性を有する流体力学の体系化を図り、広範な工学応用のための基盤を構築します。

材料構造工学講座 Mechanics of Solid Materials
材料物性学グループ(教授:中村 篤智、准教授:堀川 敬太郎、助教:李 燕)

原子・電子のスケールから,物質・材料の構造的な強さの根源の解明を行います。また、原子のスケールで構造制御を行うことにより、元素配列由来の材料の新機能を開拓します。主な研究テーマには、ナノスケール力学試験による物質・材料の構造的な強さにおける光環境効果の研究、原子配列制御によるナノ構造設計と電気伝導性・熱伝導性の計測、原子スケール分解能を持った顕微鏡観察による、固体内部の欠陥構造の観測、表面からの材料強度物性評価手法の確立などが挙げられます。これらの研究を通じて、社会に革新を起こすような新現象の発見と新技術の開発を狙っています。

固体力学グループ(教授:垂水 竜一、助教:小林 舜典)

固体材料が示す多様な非線形力学現象の解析とその応用に関する研究を進めています。主な研究テーマは、リーマン・カルタン多様体を用いた連続体力学理論の一般化、折り紙・切り紙・編み紙といったしなやかな構造体の力学と形態設計、バイオミメティック材料力学とソフトロボット開発への応用、接触・摩擦・破壊問題のためのハイブリッド連続体力学理論、マテリアルズデジタルツイン、などが挙げられます。これらの理論・応用力学研究を基盤として、固体力学分野における新しいフロンティアの開拓を目指しています。

機能デザイン領域 Division of Mechanical Engineering

機能デザイン領域は、人間の活動範囲の拡大に伴って近未来および将来必要となる人工物の新しい機能の開発や人間の機能回復・拡張を目指した教育と研究を行う領域です。近未来の宇宙開発において重要な役割を担う信頼性の高いエンジンシステムや革命的新技術として期待されているDNAナノデバイス、将来の人工物に必要な知的情報処理やその生産加工技術の開発、人間支援技術や人間拡張技術など、ブレイクスルーが必要とされているテーマに焦点を絞り、これらの機能・技術を具現化することにより基礎工学を発展させようとするものです。

推進工学講座 Propulsion Engineering
分子流体力学グループ(教授:川野 聡恭、准教授:小野 尭生)

分子流体力学とNano/Micro Electro Mechanical Systems技術を融合し、バイオ・ナノ流動、流体構造連成解析、非線形ナノ振動制御の基盤研究を行っています。四力学を出発点とし、マルチスケール・マルチフィジックスに対応できる新たな理論、実験および数値シミュレーションの展開に取り組んでいます。超微小イオン電流の計測と分子流動の可視化、光圧によるマイクロ・ナノ混相流の制御、内リンパ液中で駆動するマイクロマシンの創製を通じて、次世代の個別化医療、聴覚デバイスに関する基幹技術の構築を目指します。

流体工学グループ(教授:杉山 和靖、准教授:堀口 祐憲)

混相流、キャビテーション、非ニュートン流体、液体金属流れなど、様々な流動現象を対象とした基礎研究を行い、現象の本質を明らかにすることを目指しています。受動的・能動的機能の活用や、制御、悪影響の防止などの応用を見据えて、理論、数値シミュレーション、実験を駆使して課題に取り組んでいます。また、大規模・マルチスケールの系を対象とするデータ取得、解析を実現するため、新たな計測・予測技術の開発も進めています。

制御生産情報講座 Mechano-informatics
身体運動制御学グループ(教授:西川 敦、准教授:平井 宏明、助教:松居 和寛)

医療分野における人間支援技術として、医用画像処理や外科医の動作解析に基づく手術支援ロボットの自律制御の研究に注力しています。また、ロボットや電気刺激の介入によって知覚・運動能力を向上させる人間拡張技術を通して、ヒトの運動適応や運動学習の機序解明とスポーツ・リハビリ分野における新しい運動練習・運動訓練法の研究を推進しています。様々な物理刺激を用いたヒトの身体機能の検査法や感覚呈示手法、仮想現実・拡張現実技術を援用した新しい理学療法の研究も進めています。

数理固体力学グループ(教授:尾方 成信、講師:石井 明男,助教:新里 秀平)

変形する固体材料中に発現する特異な非線形マルチスケール・マルチフィジクス現象を、先端的な理論解析やシミュレーションを用いて根本的に解明し、さらには、それに基づく数理モデルの構築や機械学習を援用することで、新たな力学機能を持った固体材料をデザインすることを目指しています。具体的には、特異な力学特性や機能をもつナノ材料のデザイン、高強度・高延性など優れた機械的特性を有する合金材料や非晶質材料のデザイン、腐食に強い材料のデザイン、高温高圧など極限環境下で用いることができる材料のデザインに関する研究を行っています。

生体工学領域 Division of Bioengineering

生体の持つ巧妙かつ精緻な機能を発現する構造と機構を、さまざまなスケールで解析、理解するとともに、得られた知見を医学・工学などへ展開し、実用化をはかることを目指しています。そのために、生体素材・組織の構造解析、生体機能発現の原理・メカニズムの解析、生体機械の基本単位の機能・構造相関、バイオメカニクスによる生体機能の解析と生体システムのモデル化、生体の運動機能の統合的理解、生体計測・医用情報、人工臓器やティッシュエンジニアリングによる組織再生技術の開発、生体を規範とする最適設計手法の開発などに関する教育と研究を行っています。

生体機械科学講座 Biomechanical Science
バイオメカニクスグループ(教授:和田 成生、准教授:大谷 智仁、助教:吉永 司)

細胞力学実験による分析的アプローチと、計算力学シミュレーションによる統合的アプローチにより、細胞レベルの力学特性から組織・臓器レベルの機能発現に至る生体システムの解明に取り組んでいます。具体的には、細胞・組織のマイクロバイオメカニクス、ティッシュエンジニアリングによる生体軟組織の再生、血流のマルチスケール解析、ルールベーストシミュレーションによる血管病の進行予測、計算力学解析に基づく呼吸・循環器病診断支援システムの開発を行っています。

ニューロメカニクスグループ(教授:青井 伸也、准教授:小林 洋、助教:安部 祐一)

多様な環境で優れた適応能力を示す生物の歩行に着目し、生物の有する優れた運動知能の解明とその応用に関する研究を行っています。具体的には、生物の運動解析より仮説を立て、計算論的神経科学と生体力学に基づく神経・筋・骨格システムのモデル化と動力学シミュレーション、そして力学系理論に基づく解析より、生物の優れた運動制御・運動形成メカニズムを数理的に明らかにし、更には得られた知見を工学的に具現化することで、優れた運動機能を示すロボットの開発を行っています。

バイオメディカルエンジニアリンググループ(客員)(招へい教授:築谷 朋典)

重症の循環器系疾患に対する治療に用いられる機器の研究開発を行っています。開発した機器を患者さんに届けることを究極の目的として、臨床で起こっている問題を工学的にモデル化することで新しい解決方法を提案したり、開発した機器が製品として認可される際に必要な非臨床試験方法についても研究を行っています。

生体計測学講座 Biomedical and Biophysical Measurements
分子生体計測グループ(教授:出口 真次、准教授:松永 大樹、助教:福島 修一郎)

生命が周囲の環境の変化に適応する物理化学的なメカニズムの解明に取り組んでいます。この「適応」は(人工物では実現の難しい)生命特有の興味深い現象であると思います。この適応を実現できない場合、生命はさまざまな病的状態(例えばヒトの場合は動脈硬化症など)に移行することが知られています。特に細胞や細胞を構成する分子機械構造物に関する計測と理論解析・数値計算を通して複雑な生命現象の理解を目指し、得られた知見を創薬や微小ロボットの設計に応用することにも取り組んでいます。